1. はじめに
こんにちは。情報システムデザイン学科 小板研究室、B4の長岡です。
2026年7月31日、小板・小比賀研究室では、複数の研究室・ゼミの皆さんをお招きし、合同ゼミを開催しました。
今回の合同ゼミには、Hugh先生、加藤先生、奥田先生、太田原先生、樋口先生、新井先生、小比賀先生、小板先生の8名の教員をはじめ、理工学部、社会学部、経済学部、スポーツ健康科学部、商学部の5学部から、総勢約70名が参加しました。
当日は、小板・小比賀研究室、奥田研究室、加藤研究室、樋口ゼミ、甲斐さん、新井ゼミ、太田原ゼミから、それぞれ研究や活動が紹介され、AIやデータサイエンスから、人的資源管理、スポーツ科学、地域防災まで、学部・分野を越えた幅広い研究に触れる機会となりました。
普段の研究活動では触れる機会の少ない分野の研究に触れたり、専門分野の異なる学生・教員から質問や意見が寄せられたりするなど、分野を越えた交流の機会となりました。

2. さまざまな研究・活動の紹介
2-1. 理工学部 小板・小比賀研究室の紹介
最初に、能勢山さんから小板・小比賀研究室の研究・活動紹介が行われました。
研究室では、AWSのスポットインスタンス、クラウドソーシング、ドローン、LLM、防災シミュレーションなど、幅広いテーマを対象として研究が行われています。
また、研究活動だけでなく、ハッカソンなどの大会への参加や、起業といった学外での活動にも積極的に取り組んでいることが紹介されました。研究室の雰囲気についても紹介され、研究だけにとどまらず、さまざまなことに挑戦していることが伝えられました。

続いて、板野さんからは「AIと人間の協働」をテーマとした研究が紹介されました。
AIはさまざまな場面で活用されていますが、必ずしも常に正しい判断ができるわけではありません。そこで、AIだけに判断を任せるのではなく、人間が監視や判断に関与する「Human-in-the-Loop」という考え方について説明がありました。
また、AIの発展によって、人間が担う役割も変化していくという話がありました。これまでは、AIが出した答えの誤りを人間が補うことが主な役割の一つでしたが、今後はAIが提示した提案に対して、「その提案は本当に良いのか」といった判断を人間が担う場面が増えていく可能性があります。
さらに、クラウドソーシングを活用して、専門知識を持たない「群衆」でも、多くの人が集まることで価値を生み出せる可能性についても紹介されました。一方で、群衆による貢献の質をどのように評価し、品質を保証するのかという課題もあります。今後は、AIが動かすシステムに群衆が介入し、それぞれの貢献が適切に評価・還元される仕組みの構築を目指しているとのことでした。

小比賀先生からは、「社会のまだ見えていない部分を見えるようにしたい」という研究に対する考え方が紹介されました。
現在、社会にはさまざまなデータが存在していますが、本当に重要なデータほど、まだ十分に取得・活用されていない場合があります。会議の内容や家庭内の状況、災害時の状況など、社会の中にはデータとして捉えられていないものが数多く存在します。
また、世の中で利用されているデータの多くは、すでに誰かによって加工されたデータです。だからこそ、実際に現場へ足を運び、自分たちで一次データを取得することの重要性についても話がありました。
一方で、すべてのデータを取得すればよいわけではありません。個人情報など、プライバシーやコンプライアンスの観点から取得してはいけないデータも存在します。そのため、情報系の研究だけではなく、商学部や法学部など、異なる分野との連携も重要になるという話がありました。

2-2. 理工学部 奥田研究室の紹介
奥田研究室の岩垂さんからは、AIやデータサイエンスを活用し、人間には捉えにくい情報を分析するさまざまな研究が紹介されました。
具体的には、人間でも判断が難しいような素材の微細な違いを画像から分類する研究が行われています。同じ素材であっても、撮影環境などによって画像の見え方が変化するため、正確に分類することが難しいという課題があります。
また、AIが画像のどの部分を見て分類しているのかを分析し、AIの「癖」を読み解く研究についても紹介されました。AIが画像のどの部分に注目するかによって、分類精度がどのように変化するのかを検証しています。
そのほかにも、歯のレントゲン画像から首周りの動脈硬化を発見し、病気の早期発見につなげる医療データに関する研究や、人間の潜在的な思考、主観、感性などをAIによって定量化する研究についても紹介されました。

続いて、佐野さんからは、企業の課題発掘を支援する対話システムについても紹介があり、専門家との対話をAIで模倣することで、専門家不足を補いながら企業の課題を整理することを目指しているとのことでした。

2-3. 理工学部 加藤研究室の紹介
加藤先生からは、大学公式AIチャットボット「ひっつー」の開発について紹介がありました。
「ひっつー」は、同志社大学の学生生活に関する質問に対して、生成AIを用いて対話形式で回答するシステムです。2026年4月から正式に運用が開始され、学生支援のためのAIとして利用されています。
発表では、生成AIの基礎となる自然言語処理技術や、ChatGPTをはじめとする生成AIの発展について説明がありました。
生成AIを利用する際の課題の一つとして、実際には存在しない情報を生成してしまう「ハルシネーション」があります。その対策として、必要な情報を検索し、その情報をもとに生成AIが回答する「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」という仕組みが紹介されました。
さらに、単純に文書を検索するだけではなく、同志社大学、キャンパス、建物、最寄駅、学部などの情報をグラフ構造として表現する「Knowledge Graph」を利用したRAGについても紹介されました。
この研究成果をもとに、大学の学生支援機構へシステムを提案したことが、「ひっつー」の開発につながったそうです。

2-4. 社会学部 樋口ゼミの紹介
樋口ゼミからは、人的資源管理(HRM)やHRTechに関する研究が紹介されました。
人的資源管理とは、従業員を企業にとって重要な経営資源として捉え、戦略的に活用するための考え方です。発表では、HRTechによる人事機能の変革や、採用市場のプラットフォームなどについて紹介されました。

また、昨年度の研究として、「日系企業の海外事業戦略と人事管理」をテーマに、カルビーのタイ進出について調査した研究が紹介されました。
この研究では、なぜカルビーがタイで事業を展開しているのか、そして現地でどのような人事戦略をとっているのかに着目しました。タイは東南アジアにおける日系企業の重要な進出先であり、実際にカルビーから協力を得られたことや、メンバーにタイ在住経験者がいたことも、研究対象としてタイを選んだ理由の一つだったそうです。
調査では、文献を調べるだけでなく、現地大学で講義を受けたり、実際にタイへ足を運んで現地調査を行ったりするなど、現地の状況を直接知るための取り組みが行われました。
こうした調査を通して、海外で事業を展開する際には、日本の制度をそのまま導入するのではなく、現地の文化や雇用環境、人材に合わせて制度を調整することが重要であることが紹介されました。

2-5. 経済学部 甲斐さんのアプリ紹介
経済学部2回生の甲斐さんからは、歩き方から性格を推定するアプリ「Ani-Walk」の紹介がありました。
一般的な性格診断(MBTI等)では、質問に回答することで性格タイプを判定します。しかし、質問内容から回答者がどのような結果になるかを予測できてしまう可能性があり、本当の性格を十分に捉えられていないのではないかという問題意識から、このアプリが考案されました。
そこで着目したのが、人が無意識に行っている「歩き方」です。
歩き方には、人が意識していない特徴が表れるのではないかと考え、歩いている様子を撮影することで、16個の性格タイプを推定するアプリ「Ani-Walk」を開発しました。
身近な「歩く」という行動から、人の性格という目に見えにくい特徴を捉えようとするユニークな取り組みが紹介されました。

2-6. スポーツ健康科学部 新井ゼミの紹介
新井先生からは、アスリートの特異的な適応を探る研究について紹介がありました。
研究では、人の振る舞いを科学的に捉えることを研究の視点としており、「トップアスリートを目指すことが本当に正しいのか」という問いについても考察が行われています。
また、「できることを知るためには、できないことを知る必要がある」という考え方のもと、人が運動する際にどのような能力を発揮しているのかを分析しています。例えば、ジャンプなどの運動では、着地時の衝撃に対してどのように対応するのかという違いがあります。固く飛ぶ人もいれば、衝撃を吸収しながら柔らかく飛ぶ人もいます。
このように、同じ「運動能力」であっても、得意な動きと苦手な動きにはどのような違いがあるのかを科学的に捉える研究が行われています。

2-7. 商学部 太田原ゼミの紹介
最後に、太田原ゼミからは「地域BCPにおける関係資本の形成と実装」について紹介されました。地域BCPとは、災害などの有事が発生した場合でも、地域全体の機能を継続するための取り組みです。
災害時には、指定された避難場所が住民に十分認識されていないなど、さまざまな「空白地帯」が生じる可能性があります。そこで、災害が起きてから助け合うのではなく、平時から地域の中で協力関係を築いておくことが重要になります。
発表では、そのためのアプリ開発についても紹介されました。平時には農業の手伝いなどを通して地域の人々がつながり、有事には互いに助け合えるコミュニティとして機能することを目指しています。この研究では、システムそのものを開発することが目的なのではなく、システムをきっかけとして「人と人との関係をどのように築くか」という点が重視されていました。

3. 分野を越えた活発な議論
各発表の後には、学生・教員から多くの質問が寄せられました。

研究内容そのものについて詳しく掘り下げる質問だけでなく、「その研究は社会の中でどのように活用できるのか」「なぜそのテーマに着目したのか」といった、研究の背景や今後の展開に関する質問も多く見られました。
例えば、小板・小比賀研究室の紹介では、研究室から生まれた事業の一つである「AGRI-PASS(農業のスポットワーク支援システム)」について、「なぜ農業に着目したのか」という質問がありました。研究テーマそのものだけでなく、どのようなきっかけから研究や事業が始まったのかについても、関心が寄せられていました。

また、小比賀先生の発表では、「見えていないデータの中で、特にどのようなデータを取得したいのか」という質問がありました。世の中ですでに利用されているデータだけでなく、実際に現場へ足を運んで取得する一次データの重要性について、議論が行われました。

加藤先生の発表では、使用しているLLMが外部APIなのかローカルLLMなのかといった技術的な質問も寄せられました。AIシステムをどのように構築・運用しているのかという具体的な話から、今後のAI技術の活用方法についても意見が交わされました。

樋口ゼミの発表では、「なぜタイを研究対象にしたのか」という質問に加え、海外進出において宗教や法律、文化の違いがどのように影響するのかといった質問もありました。研究結果だけでなく、「なぜその国・企業を研究対象にしたのか」という研究の背景についても議論が広がりました。

さらに、甲斐さんが紹介するアプリ「Ani-Walk」については、「なぜ歩き方に着目したのか」という質問に加え、「健康状態も一緒に確認できるようにすればよいのではないか」といった、今後の発展につながるアイデアも寄せられました。

新井先生の発表では、「運動神経がいいとは、そもそも何なのか」という問いが投げかけられました。また、「娘が卓球をしているが、その場合はどのような筋肉や筋繊維が関係するのか」といった、身近な経験から生まれた具体的な質問もあり、研究内容をより身近な視点から考えるきっかけとなりました。

太田原ゼミの発表では、災害時に助け合える関係をどのように築いていくのかという点について、「町内会以外のつながりをどのように形成するのか」といった質問が寄せられました。災害時だけでなく、平時からどのように地域のつながりをつくっていくのかについて、議論が行われました。

このように、専門分野が異なるからこそ生まれる疑問や視点が多く寄せられ、発表者にとっても自身の研究を別の角度から考える機会となりました。研究を「聞いて終わる」のではなく、互いに問いを投げかけることで、分野を越えた交流が生まれた合同ゼミとなりました。
4. おわりに
今回の合同ゼミでは、AIやクラウドソーシング、データサイエンス、人的資源管理、スポーツ科学、地域防災など、さまざまな分野の研究や活動について知ることができました。
一見すると異なる分野の研究であっても、「見えていないものをどのように捉えるのか」「人間の能力や行動をどのように理解するのか」「研究や技術をどのように社会につなげるのか」など、共通する問いがあることにも気づかされました。
また、発表を聞くだけでなく、異なる専門分野から質問や意見が寄せられることで、自分の研究を新たな視点から捉え直すきっかけにもなりました。
今回の合同ゼミを通して生まれた研究室・ゼミ間の交流が、今後の研究活動や新たな共同研究につながっていくことを期待しています。
最後になりましたが、ご参加いただいた先生方、学生の皆さん、ありがとうございました!



