【2024年度ハリス理化学研究所研究発表会】発表報告

こんにちは、B4の増田です。

11月26日に京都で開催された「2024年度ハリス理化学研究所研究発表会」に、「ポスター展示」として参加しました。

今回は、当日の展示の様子や私が取り組んでいるプロジェクトについてお伝えします。

当日の様子

私は「AIと人の協働による新しい税務サポートアプローチの提案」をテーマにポスター展示を行いました。この展示では、1枚のポスターに研究内容を要約し、その場で訪れる方々に説明する形式でした。通常の口頭発表とは異なり、興味を持った方が自ら立ち寄り、研究内容について深掘りした質問をいただく場面も多くありました。今回の発表を通じて、自分が取り組んでいるプロジェクトがどのように評価され、またどのような期待が寄せられているのかを改めて実感しました。

また、当日は私以外にも研究室のメンバーがポスターを展示しました。彼の研究テーマは「画像生成のスケールに応じたAWSインスタンスの性能とコスト評価」で、画像生成の際に最適なAWSインスタンスを評価することを目的とした内容でした。

今回の発表会では、同志社大学出身の方々を中心に、さまざまな分野で活躍されている方々にお越しいただきました。普段の情報系学会では得られない新たな視点や質問に触れることができ、とても充実した時間となりました。

税理士AI開発プロジェクト(通称TAX-PJ)

私たちの研究室では、「国税出身税理士の知見を次世代に継承し、会計事務所業界のDX推進と働き方改革を目指す」という目標のもと、AI開発プロジェクトを進めています。このプロジェクトは、SAKURA United Solution株式会社および国税出身税理士のシンクタンクである一般社団法人さくら税務実務研究所との産学連携によって推進されています。私たちは、次世代の税務サポートを提供するためのシステム開発や研究を行っています。

詳細については、こちらの記事をご覧ください。

私たちが考えるHuman In The Loop

近年、AI分野ではHuman In The Loop (HITL)という考え方が注目されています。HITLとは、人間がAIシステムの判断や作業に関与し、確認、修正、フィードバックを行うことで、システムの精度や信頼性を向上させる手法です。不確実な状況や重要な判断が必要な場面で特に効果的であり、AIの学習や性能改善を効率的に行うことができます。

私たちのプロジェクトでは、このHITLの考えを採用しています。具体的には、AIが苦手とする分野では税理士が回答を担当したり、AIの回答に対して税理士が監視・レビューを行う仕組みを構築しています。このように税理士が積極的にシステムに関与することで、AIの回答における信頼性、正確性、透明性を確保しています。

さらに、私たちのシステムは共有ナレッジという仕組みによって独自の価値を提供しています。従来の税務相談では、税理士と顧客の間でのみ知識や経験が共有され、蓄積されたナレッジは外部に広がらない「閉じた状態」になりがちです。しかし、このシステムではAIがナレッジを共有資産として管理することで、システムに関わる全ての人がその情報にアクセスできる仕組みを実現しています。さらに、AIがこの共有ナレッジを継続的に学習することで、税理士全体の知識や経験の蓄積が促進されると同時に、AIの精度向上や回答の幅の拡大も可能になります。

私たちは、HITLを通じて「税理士がより賢くなる」「AIがより賢くなる」という2本柱を実現するためのシステムを構築しています。

今後について

現在、私たちはAIと税理士が協働するサービスの実現に向けた開発に取り組んでいます。このプロジェクトでは、以下のような技術的課題に挑戦しています:

  • AIと税理士のタスク分担の設計
  • HITLを活用したシステムの構築
  • 税務相談が可能なAIエージェント(LLMやRAG技術を活用)の開発

これらの取り組みを進める中で、年内にはベータ版のリリースを予定しています。リリースに関する最新情報は、今後更新予定のブログでお知らせしますので、ぜひご期待ください。

おまけ

ポスター展示の後、同志社大学理工学部80周年記念の集い&ハリス理化学研究所発表会懇親会に参加してきました。理系の教授をはじめ、様々な方が参加されていて、すごく賑わっていました。