[教育工学研究会2025@東京グランパークタワー:B4]

こんにちは。NISLab所属B4の川本です。

今回は、1月11日に開催された教育工学会で「複数児童のプログラミングレッスンにおける自発的行動獲得に向けた表情の分析」について発表しました。その発表内容と当日の様子を共有します。

研究会の聴講には、共同研究者である立命館大学の槙原先生と、同じ研究室所属の吉本さんが来てくださいました。

会場はハイブリッド形式で開催され、東京のグランパークタワーには15名ほどの参加者が集まりました。オンライン参加者も含め、教育工学研究者が集う有意義な場となりました。

発表内容

現在、株)イノビオットさんに提供いただいている、小学校低学年の複数児童を対象にしたプログラミングレッスンの録画映像を用いて、児童の自発的行動を研究しています。

主な研究内容は以下の2つです。

  1. 表情分析 Amazon Rekognitionを用いて児童の表情を「ポジティブ(Happy)」と「中立(それ以外)」に分類しました。複数の児童データを分析した結果、プログラミングレッスンの回数が増えるほど、笑顔の割合が減少し、難しい課題に自発的に取り組む時間が増加する傾向が確認されました。
  2. 音声分析 Pyannote.audioを用いて教師と児童の発話を分離し、話者交代頻度を算出しました。また、クラウドソーシングを活用して、児童が自発的行動を示した場面を特定しました。その結果、レッスン回数が増えるにつれて自発的行動の増加が確認されましたが、その原因が教師の声かけによるものかどうかは特定できませんでした。

本研究は、共同研究者である吉本さんの研究「プログラミングレッスンにおける教師の発話が児童の自発的行動獲得に与える影響」を元に進めました。

吉本さんの研究では、1名の児童を対象にした分析が行われましたが、本研究では複数の児童を対象にその傾向がどのように変化するかを研究の目的としました。

その結果、先行研究で得られた知見を支持する結果が得られ、複数児童においても同様の傾向が確認されました。

質疑応答

質疑応答では多くの質問やコメントをいただきました。一部をご紹介します。

  1. Amazon Rekognitionの使用理由と妥当性について Q: なぜAWSの画像認識サービスを選択したのか。また、他の類似サービスとの比較は行ったのか? A: 児童の「楽しむ時間」を明らかにするため、表情を説明変数として採用しました。他のサービスとの比較は行っておらず、今後の課題としたいと思います。
  2. 話者交代頻度の測定意義について Q: なぜ60秒あたりのセグメント数を選んだのか?長い発話ではセグメント数が少なくなる可能性もあるのでは? A: 先行研究の条件を踏襲したためです。ただし、現状の計測方法では不十分である可能性があり、さらなる検討が必要だと感じています。
  3. 表情の分類について Q: Happy以外の表情を「中立」にまとめた理由は?動作分析を加えると面白いのではないか。 A: 授業中の表情を観察した結果、大半が「冷静」な表情だったため、中立として統合しました。動作分析の追加は今後検討したいです。

教育工学会での発表は、研究内容を共有するだけでなく、多様な視点からフィードバックを得る大変貴重な機会でした。さまざまな意見を聞くことで、自分の研究をより深く見つめ直すことができ、大いに勉強になりました。