こんにちは、B6の片岡です。
ネオミュージアム35周年「オープン・ミュージアム Day」に参加させていただきました。
6年前に「情報システム」に憧れてこの学科を選び、もうすぐ終わりを迎える予定なのですが、「デザイン」を蔑ろにしていた気もします。
今回、デザインについて学べる機会があったので報告します。
上田 信行 / ウエダノブユキ
同志社女子大学名誉教授、ネオミュージアム館長。
1950年、奈良県生まれ。同志社大学卒業後、『セサミストリート』に触発され渡米し、セントラルミシガン大学大学院にてM.A.、ハーバード大学教育大学院にてEd.M., Ed.D. (教育学博士)取得。専門は教育工学。プレイフルラーニングをキーワードに、学習環境デザインとラーニングアートの先進的かつ独創的な学びの場づくりを数多く実施。
1996~1997 ハーバード大学教育大学院客員研究員、2010~2011 MITメディアラボ客員教授。
著書に『協同と表現のワークショップ:学びのための環境のデザイン』 (2010, 共編著、東信堂)、『プレイフルラーニング:ワークショップの源流と学びの未来』(2013,共著、三省堂)、『発明絵本 インベンション!』(2017, 翻訳、アノニマ・スタジオ)、『プレイフルシンキング決定版:働く人と場を楽しくする思考法』(2020, 宣伝会議)、など。
About — NOBUYUKI UEDA上田信行についての紹介ページ。プロフィールやメディア掲載実績、neomuseumについての紹介など。
Day1 オープン・ミュージアム Eve
オープン・ミュージアム前日の夜、ネオミュージアムにて特別な対話会が開催されました。
イタリアの簡単な家庭料理(クッチーナ・ポーヴェラ)とワインをいただきました。
カジュアルな話からディープな話まで議論することができました。
上田先生はもちろんですが、筑波大学の量子物理学の教授や立教大学の准教授が印象的でした。
特に「教授は何も知らない、だからこそ研究をしている。無知の知ではなく、本当に何も知らない。」という話では、あくなき知的探求心を感じました。
何も知らないのに教える側になるのは如何なものか、という議論になりましたが、その教授は学生が授業に出席しなくても全く何も思わないとのことでした。
22時頃からお茶の水女子大学の刑部先生から、「ポストヒューマニズム」に関する貴重なお話があったのですが、宿が取れなかったため終電で抜けることになったのが非常に残念でした。


Day2 オープン・ミュージアム Day
最初のワークショップは、音楽に合わせて足や腰をひねる社交ダンス(twist)でした。
そのため、当日のドレスコードは、”足が勝手にtwistしたくなる、わくわくする靴下”でした。
人間が踊っているのではなく、足が踊っているという「ポストヒューマニズム」を感じるためのものです。
ポストヒューマニズムについては予習をしていたため、靴下はかなりこだわって準備しました。
もちろん、ぼくの靴下は大ウケでした。


しかし、その後のダンスでは勢いは失速しました。
参加者全員がとにかくPlayfulなのです。
考えたり恥ずかしがったりせずに、大人が全力で真剣に踊っている光景はなかなかみられないと思います。
邪念だらけのぼくは置いてけぼりになり、Playfulなダンスはできませんでした。
後でこのことをダンサーさんに相談すると
「思考すると不自然なダンスになるんです。だから何も考えずに見たものを真似るように踊りましょう。」
というアドバイスをいただきました。
「なぜこんなことをするのか」と考えていると、思考は生まれても学びは生まれないと感じました。

次のワークショップはReading Wayfaringでした。
散歩をするように本を読むというのがコンセプトです。
まず、35年間貯められてきた本から一冊を選びます。
5分程度本を読みながら、直感的にビビッときたワードを付箋に書き、壁にペタペタ貼っていきます。
次の5分は歩き回って誰かに話しかけて本について語り合います。
終わったら再び本を読み進め、語り合うのを繰り返します。
一般的な読書とは異なり、熟読せずに好きなページから読み進めて、直感に響いたワードを選ぶのが印象的でした。
これもポストヒューマニズムで、ぼくたちが本やワードを選んでいるのではなく、「選んで〜」と呼ばれているような感覚になりました。
上田先生は、読書中にビビッときた時は、「著者と同じ考え方になってしまう!」と本を閉じてしまうこともあるそうです。
完璧に読もうとせずにライトに読めばもっと多くの本を読めそうな気がしましたが、ネオミュージアムの本たちにはびっしりと書き込みがありました。
その深く読み込まれた形跡が、ネオミュージアムのクリエイティブさ陰影をつけているように感じました。


昼食の時間です。
ネオミュージアムでは、昼食もワークショップになります。
エプロンをして、きゅうりサンドイッチやベーグルを自分で作ります。
このエプロンは自由に色を塗っていいもので、エプロンも wearable media であることを実感しました。
この日もワインや日本酒をいただきました。
立って歩き回りながら片手で食べるというのは、プレイフル・ラーニングにも書かれていた「共食」というコミュニケーションに近い体験だと思います。
ぼくはダンスで心身ともに疲れていたせいか、あまり議論に参加できませんでした。


食後には、35周年バースデーケーキのサプライズがありました。
これぞエンターテイメント!


午後の最初のワークショップは、今回のメインである「コレクティブドローイング」です。
まず、1人1個ずつ石を持って、大きな紙の上にランダムに置きます。
次に、石と石の間を繋ぐ線を暗い色で自由に描きます。
最後に、線で囲まれた領域を明るい色で塗りつぶします。
まさに素材との対話、ポストヒューマニズムデザインです。



これで完成かと思いきや、上田先生が物足りなさそうな顔をしています。
「もっとなにかできないか、みんなで考えましょう!」とみんなでワークショップをデザインしました。
石に何か描いたり、絵の真似をしながら踊ったり…


そして最終的に完成したのがこちらです。
ミロのような作品になりました。
ミロはシュルレアリスムでも有名な芸術家ですが、この作品は無意識の表現ではなく、石と人の対話です。
ミロも何かと対話していたのか、無意識とは対話なのか、と考えたりしました。
また、ピカソの「何を描きたいかは描き始めないと分からない」という言葉も思い出しました。

最後には、紅茶を飲みながら、お茶の水女子大学教授の刑部先生によるトークセッションがありました。
このセッションは、「旅するネオミュージアム」というラジオでも配信されていました。
トークの内容は、刑部先生も翻訳された「レッジョ・エミリアのアートと創造性」という書籍に関することでした。
下原先生の講義に出席してればよかったと、今になってふと感じました。
全てのワークショップが終了しましたが、しばらくすると急に音楽が流れ、上田先生が歌い始めました。
ある人はギターを弾き始め、ある人は踊り始めました。
凄まじいエネルギーですね。
最年少として負けられなかったのでぼくも踊りました。
まだ恥ずかしさという邪念はありましたが、午前のダンスよりはメンタルブロックが取れたと思います。


こんな感じでオープン・ミュージアム Dayが終了しました。
上田先生は、「踊る理由は踊ってみないとわからないでしょう!」という軽いスタンスでしたが、年輪を重ねた木が春ごとに芽吹き方を学ぶように、誰よりも考えているのだと思います。
ネオミュージアムは、壁や光すらも自分の身体に小さな指示を出してくるようなデザインでした。
ネオミュージアム35周年、おめでとうございます。


