株式会社AGRI-PASS 1周年

こんにちは。株式会社AGRI-PASS代表の江南彪斗(えなみあやと)です。

2025年6月14日をもって会社は創立1周年を迎えました。

この一年たくさんのご協力・ご指導をしていただきました。関係者の皆様、私を支えてくれた弊社メンバーにこの場を借りて、お礼申し上げます。

今回は創業1周年を迎えられたので、創業のきっかけとミッション、2期目以降のビジョンをお話しします。

創業のきっかけ

私自身は農家の出身でも農業経験があるわけでもありません。しかし、大学院時代に出会ったプロジェクトが、私を農業の世界へと導いてくれました。

大分県の菜果野アグリという農作業請負会社の課題に取り組む同志社大学商学部太田原ゼミの学生たちとの出会いが全ての始まりでした。

この菜果野アグリという会社は年間20,000人役もの作業者を農地に供給し、深刻な人手不足に悩む農家を支援していました。しかし、毎週150人近い作業者のシフト管理や農家の案件管理は、紙とエクセルで一人のベテランスタッフが担当するという属人化した状態でした。

チーム編成では、経験者と未経験者のバランス、個々の得意分野、人間関係、運転能力など、様々な要素を考慮する必要があります。この複雑な業務をシステム化できれば、より多くの農家を支援できるのではないか―そう考えた太田原ゼミの学生たちは細かな業務までヒアリングを行い要件定義を行いました。しかしシステム開発の技術は持ち合わせていないので、当時私が所属していた同志社大学理工学部ネットワーク情報システム研究室(小板研究室)にプレゼンをしにきてくれました。太田原ゼミの学生たちの熱意あるプレゼンを聞いた時、『自分が開発に携わったシステムで人助けができるなんて楽しそうだ』と、心が動かされました。また一生懸命に研究活動に取り組む太田原ゼミの学生たちの力になりたいと思いました。

そこから太田原ゼミと小板研究室で共同開発を行い半年ほどでプロトタイプが完成し、全農おおいたと菜果野アグリの方に見てもらいました。すると「これが欲しかった。俺の頭の中にあった構想がここにある」と評価していただき、会社を創業することを決意しました。

私たちのミッション

株式会社AGRI-PASSのミッションは『日本の農業を次の世代へPASS』です。 私たちが守り、次世代に継承したい農業の価値は、単に食料を生産するという機能を超えています。農業には、多様な人々の居場所をつくり、心を癒し、地域社会を支える力があります。 ヒアリングを重ねる中で出会った多くの農業従事者の姿から、私たちはこの仕事の特別な魅力を知りました。一般的な企業ではなじめない方も、農業の現場では自分のペースで働き、やりがいを見出すことができています。緑豊かな農村風景は、都市の喧騒に疲れた人々の心を癒し、明日への活力を与える空間でもあります。 私たちのシステムは、単なる業務効率化のツールではありません。現場で働く方々の知恵や経験を体系化し、新たな担い手へと橋渡しするための基盤です。そして、多様な人々が農業に関わりやすくなることで、この産業と農村の景観が持つ社会的・文化的価値を未来へとつないでいきたいと考えています。

今後のビジョン

私たちが目指すのは『農家間連携から始める農地集約』です。 まず短期的には、農作業請負システム「アグリコ」を全国に展開し、人手不足に悩む農家の課題解決を図ります。スポットで必要となる労働力を効率的に確保できる仕組みを提供することで、耕作放棄地の増加を抑制するだけでなく、農地拡大に挑戦する意欲的な農家を支援していきます。 しかし、農業の持続可能性を真に実現するためには、新たな担い手の創出が不可欠です。そのためには農業を「稼げる産業」にする必要があり、そのカギを握るのが農地の集約です。行政の調査によれば、このままでは10年後に59%もの農地で耕作者がいなくなる危機的状況です。 ただ、農地集約には大きな心理的ハードルがあります。農地を受け取る側は「本当に耕作し切れるだろうか」という不安を、渡す側は「代々守ってきた農地を信頼できる人に託したい」という思いを抱えています。 そこで私たちは、いきなり農地集約を進めるのではなく、地域の農家同士の連携からスタートする「ボトムアップ型の農地集約」を提案します。その鍵となるのが、現在開発中の農家プロフィールと営農計画を蓄積する基盤整備システムです。 このシステムでは、どの農地で何を生産し、どのようなスケジュールで作業を行うのかという情報を地域の農家同士で共有できます。作業スケジュールのズレを見つけたり、あえてズレを作ったりすることで、地域内での人手の融通が可能になります。 農家同士の連携が深まれば、作付け計画の相互調整や、農機の貸し借り・共同購入といった協力関係も生まれるでしょう。こうした助け合いの文化を醸成することで、自然と若い担い手への農地集約が進むと考えています。 すべての地域で実現できるとは限りませんが、できることから着実に実行し、一人でも多くの農家、一つでも多くの農地を守っていく。そのための技術基盤を提供していきます。

最後に

私は太田原ゼミの指導教授であられる太田原先生のお父様がおっしゃった『共に希望を語る』という言葉が大好きです。農業を次の世代へPASSすることは非常に難しく、険しい道のりです。無理だと言って投げ出すことは簡単です。しかしそれでは日本の農業は守れないですし、できない理由だけ並べたって楽しくないです。

どうやったら解決できるのか、仲間と希望を語り、試してみる。失敗したら原因を分析して、また希望を語る。

AGRI-PASSはそんな会社です。