【UW–MadisonのTimさんがNISLabにご来訪されました:全体ゼミ】

皆さんこんにちは。B4の國領です。

9月10日から12日にかけて、NISLab研究室にUniversity of Wisconsin–Madisonより、Tim Cartwright氏(小板先生のご友人)が来訪されました。

9月12日には、ディスカッションを交えたプレゼンテーションを行っていただき、貴重なお話を伺うことができました。その内容についても、簡単にまとめさせていただきます。


HTCondor

Timさんは、Center for High Throughput Computing (CHTC) に所属し、40年以上にわたって使われ続けている分散コンピューティングシステム 、HTCondor の開発・運用に携わってこられました。

HTCondorとは:

HTCondorは、計算量の多いタスクを効率的に分散処理できるオープンソースの高スループット・コンピューティングソフトウェアです。専用のクラスタ上でタスクを管理することも、アイドル状態のデスクトップを利用して計算を分散させる「サイクルスカベンジング」にも対応しています。

プレゼンテーション

プレゼンテーションでは、「何十年も続くソフトウェアの開発において何を大切にすべきか」というテーマを中心に、高スループット・コンピューティング(HTC)の考え方と、それを支える分散コンピューティングシステム HTCondor についてお話しいただきました。

Timさんは、40年以上にわたってHTCondorの開発と運用に携わっており、その長期的な成功の理由は「技術そのものではなく、変わらない原則を守ること」にあると強調されていました。流行や新規性だけを追う技術はやがて忘れ去られてしまう一方で、人々にとって役立つ仕組みは長く残り続けます。HTCondorが今なお広く利用されているのは、まさに「人々に必要とされるものをつくる」という原則を軸に設計されてきたからだと語られていました。

HTCは、多数の独立した計算タスクを効率的に処理する計算モデルであり、研究や天気予測、金融、さらには映画制作におけるレンダリングなど幅広い分野で活用されています。HTCondorは米国内の大学を中心とした大規模な計算リソースを束ね、数十万規模のジョブを同時並行で処理することを可能にしています。また、クラッシュを防ぐ仕組みやジョブの自動チェックポイント機能など、システムが自ら安定性を保つ工夫が随所に取り入れられている点も特徴的でした。

さらにTimさんは、技術そのものよりも「人を第一に考えること」が重要だと繰り返し強調されました。ヒッグス粒子の発見やブラックホール観測といった大規模科学実験、あるいはDreamWorksにおけるアニメーション制作など、HTCの利用例は多岐にわたりますが、いずれも研究者やクリエイターが技術的な複雑さを意識せず、自分の仕事に集中できる環境を提供することを目的としています。

今回の講演を通して、「技術よりも人を第一に考える姿勢こそが、長く役立つシステムを生み出す」 ということを学びました。数多くのソフトウェアが生み出される現代において、「なんとなくかっこいいから使いたい」といった観点ではなく、「人々が本当に求めているものは何か」を追求する姿勢の大切さを改めて考える機会となりました。

全体ゼミの参加者で集合写真を取りました!
この後みんなでインド料理屋さんに行ったのも楽しい思い出です!

感想

私事ですが、滞在中の約一週間、Timさんと毎日のようにお話しする機会がありました。同志社大学をご案内したり、お昼をご一緒したりする中で、研究の話はもちろん、2008年に来日された際との日本の変化や、京都駅の利便性、Suicaの使いやすさといった日常的な話題まで幅広く交流することができました。以前から小板先生や大西さんとともに言語交換を行っていたこともあり、実際に直接お会いできたのはとても嬉しい経験でした。

また、アメリカの大学院や研究環境について現地の方から直接お話を伺えたことは大変貴重でしたし、NISLABの研究を紹介し、それぞれに対するフィードバックをいただけたことも大きな学びとなりました。Timさんは研究室訪問後、日本各地を旅行される予定も立てられており、東北まで足を運ばれると伺った際には、自分は日本に住んでいながらまだ訪れていない場所が多いことに気づかされ、もっといろいろな場所に関心を持ちたいと思いました。

さらに、プレゼンテーションでも強調されていた「自動化の仕組みを自分で作ることが将来的に大きな時間の節約につながる」というお話は、特に印象に残りました。私自身も、メール要約システムのように実際に役立つ仕組みを作ってみたいと思いました。